海外赴任が決まると、荷造りや住まい探しの前に、必ず整理しておくべき大切な準備があります。
それが、日本国内で行う「役所・税金・保険・年金・銀行・マイナンバー」の各種手続きです。
しかし実際には、制度の情報が散在していたり、会社から説明が不十分だったりと、正しい手順が分かりにくいのが現状です。
本記事では、海外赴任経験と実務の知識をもとに、赴任前に必要な手続きをすべて整理し、わかりやすくまとめました。
この記事をチェックすれば、手続きの漏れなく、安心して渡航準備ができます。
海外赴任前に必要な手続き一覧(全体像)
海外赴任前の手続きは大きく次の8つのことに分かれます。
- 市区町村役場での手続き
- 税金(住民税・所得税)
- 健康保険
- 年金
- マイナンバー
- 銀行・クレジットカード
- 子どもの学校関連
- 引越し・住所変更
これらは相互に関係しており、一つ抜けると後々トラブルにつながることがあります。以下で順番に解説します。
1. 市区町村役場で行う手続き(最優先)
海外赴任手続きの中で、最も重要な部分が役所での手続きです。ここが正しくできていないと、税金や保険の扱いがすべてズレます。
海外転出届(最優先の手続き)
日本の住民票を海外へ移すための手続きです。
これを出すことで「非居住者」として扱われ、税金や保険の制度が切り替わります。
提出期限は出国の14日前から当日まで。多くの人は 3〜7 日前に手続きをしています。
家族帯同の場合は、同行する家族全員分が必要です。
海外転出届を提出すると、住民税・健康保険・年金・マイナンバーにも自動的に影響が出ます(後述)。
国民健康保険の脱退(自営業の場合)
海外転出届を提出すると自動で脱退になります。
自治体によっては保険証の返却が必要です。
児童手当の停止
海外赴任すると児童手当は停止されます。
一部自治体では、国内に住む親族を「受給者」に変更することで継続できる場合があります。
2. 税金(住民税・所得税)
税金は「国内に住所があるかどうか」で大きく変わります。
住民税
海外転出すると、翌年度の住民税が免除されます。
ただし、1〜5月出国の人は前年度分の住民税の支払いが残るため注意が必要です。
所得税
海外赴任者の給与は「国内給与」「海外給与」に分かれることがあります。
源泉徴収や課税方式は会社が決めるため、赴任前に必ず総務へ確認しましょう。
3. 健康保険(会社員・自営業で異なる)
会社員の場合、日本の健康保険はそのまま継続されます。
海外の医療機関で受けた治療は、一時帰国後に「海外療養費制度」を利用して還付申請ができます。
自営業の場合は国民健康保険を脱退し、現地の医療保険や海外旅行保険などを自分で準備します。
4. 年金(老後に影響する重要項目)
会社員(厚生年金)
日本の会社に在籍している限り、厚生年金は継続されます。
自営業(国民年金)
海外転出すると国民年金は「任意加入」に切り替わります。
加入を続けないと、将来の年金額が減るため注意が必要です。
5. マイナンバーの扱い
海外転出届を提出すると、マイナンバーカードの機能は自動的に失効します。
番号自体は残りますが、カードは本人確認書類として使えなくなります。
帰国後は転入届を提出し、マイナンバーカードを再発行する必要があります。
6. 銀行・クレジットカード
海外で最もトラブルが多いのが銀行関係です。
口座凍結のリスク
住所変更や電話番号の更新をしないまま海外に行くと、
海外からのログインが弾かれたり、口座が凍結されることがあります。
赴任前に必ず、
- 登録住所を日本の家族住所へ変更
- 電話番号も日本の家族の番号へ変更
- 海外利用可能なオンライン銀行を確認
しておきましょう。
キャッシュカードは複数枚持つ
海外ではカードの紛失や破損が起きやすいため、予備カードの準備が重要です。
7. 子どもの学校関連
子どもがいる家庭では、学校関係の手続きも必要です。
- 日本の学校で転出届を出す
- 在籍証明書を取得する
- 海外のインターナショナルスクールや日本人学校の入学書類を準備
- 健康診断や予防接種証明の用意
- 帰国後の学区・編入方法を事前に調べておく
インター校は定員が埋まりやすいため、辞令が出たら早めに学校探しを始めるべきです。
8. 引越し・住所変更・荷物
海外引越しでは、国内の引越し以上に準備が必要です。
- 海外引越し業者の見積り
- 船便と航空便の仕分け
- 禁制品の確認
- 実家などへの住所変更
- 郵便の転送設定
- 電気・ガス・水道などの解約
特に郵便物の管理は重要で、実家など確実に受け取れる住所を設定しておきましょう。
まとめ
海外赴任前の手続きは多く見えても、優先順位と流れを理解すれば難しくはありません。
このリストに沿って進めれば、住民税・保険・銀行・学校などのトラブルを避け、スムーズに海外赴任をスタートできます。
渡航前のチェックリストとして、ぜひ保存してご活用ください。



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